<故障個所>
秒針カナのほぞを秒針押えバネで押さえているが、同一キャリバー(0703A)の3個の時計いづれもホゾ部が摩耗でなくなっていると思われます。このため、抵抗が大きくなり振り角不足が生じているのではないかと考え以下の対策を実施し確認しました。
<摩耗の程度>
(新品ホゾ部未確認)また、A,B,Cのいづれの押えバネにも秒針カナのホゾによると思われる細い凹みと、ホゾま磨滅後の軸部による大きな回転キズ(凹み)が見られました。
参考:製造番号と製造年月
A:修理記録 写真1左 300496 1973年10月製
B:修理記録 写真1右 5D1254 1975年12月製
C:手持ちの時計 5D0854 1975年12月製(穴石の中に多量のさび色の摩耗粉あり)
秒針カナホゾ部の磨滅比較
製造年が一番古いAが一番摩耗していました。カナ全長をノギスで測定した結果はA=5.75mm、
B=5.85mm、
C=5.80mmでした。
対策1
秒針カナのホゾが磨滅して軸と押えバネが接して動いていて秒針カナの回転抵抗が大きくなっていて、振り角が悪くなっていると考えた。新品の秒針カナが入手できないため、抵抗を減らすため押えバネ側に受石を貼り付けました。軸側はそのままで写真のように組み立てて動作を確認したが振り角は改善されませんでした。バネ圧の調整もいろいろ試みましたが変化なくこの対策では振り角が改善することはありませんでした。
厚さ0.04mmのバネに0.15mm厚さの受石を貼り付けると秒針カナを押さえる力が増えるので、適正圧になるようバネを整形調整しました。
対策2
軸側も写真のように当たり面の加工を追加した。写真右のように面取りして青粉で磨いた。受石+軸研磨でも振り角は特には改善されなかったことから、秒針カナホゾの磨滅は故障箇所ではありますが、振り角不足の原因ではありませんでした。