この時計は1960年前半に仏LIP社により生産されました。
<依頼内容>
ヤフオクで入手したが不動ということで整備依頼されました。
ボタン電池、電磁石、火花消去ダイオード、ヒゲゼンマイのテンプ、およびテンプ下の接点振り石、接点バネでテンプモーターを構成し輪列を駆動します。
<仕様>
振動数:18000回/時
(5振動)
インカブロック、13石
電池電圧:1.5V
不動の原因は接点バネの変形でした。接点バネを整形、接点間隔の調整などで、良好に動作するようになりました。
接点バネは2本組みで、先端が1点になるのが正しいのですが、バネはバネ性はあるものの、柔らかく整形は難しいです。微妙で根気が必要です。
テンプに3つのルビーの振り石があります。テンプが反時計方向に回転する時に、接点振り石が接点バネ先端を曲げて接点が閉じます。その時に電磁石が励磁され磁石になり、テンプを引き寄せます。テンプが行きすぎると接点バネが外れ磁力が無くなり、ヒゲゼンマイの引き戻す力で、テンプは逆方向に回転を始めます。あるところまで行くと、同じくヒゲゼンマイの力で反時計方向回転となり・・・を繰り返し、テンプが往復回転を続けます。
<分解整備後の性能>
1.びぶ朗60秒チャート
姿勢差も少なく、しっかりした歩度線であり、良好な結果が得られました。
2.24時間文字板上ランニング結果:約30秒の進みでした。緩急調整が敏感で歩度調整がやりにくい面がありました。
3.電池寿命(目安)
消費電流は5μAでした。SR43SWの容量は110mAh、電池寿命=容量÷消費電流から求めます。電池寿命=(110×1000μAh÷5μA)=22000時間 22000時間÷24時間=916日 916日÷30日=30ヶ月 電池寿命は2年程度となります。
<整備後の感想>
接点バネを正しい位置関係に整形、調整することにつきます。バネの線径は約0.25ミリでバネ性あるも柔らかいので整形には工夫が必要です。
<修理完了> 2019-11