シチズンハイソニック(音叉調速式電池腕時計)

故障1:音叉は振動しているが輪列が動かない

 

 

音叉調速式電池腕時計、シチズンハイソニックは1971年に販売開始されましたが、その後のクオーツとの価格競争に敗れ、売り上げは激減した歴史があります。シチズンハイソニックの歴史はこちらを参照ください。

しかしながら、時計のメカニズムには感動します。音叉の振動で直径2.5mm、歯数320のインデクス歯車を送りツメ、止めツメで回し、日差±1秒も簡単に調整できるという素晴らしい時計です。

時計を耳に当てると心地よい連続音(ハ長調のファ音に近いと言われています)がします。また、秒針もなめらかなスイ―プ運針です。一味違う良い時計です。

シチズンハイソニックの仕様

振動数:360振動/秒(360Hz)

電池:280-05 EVEREADY No.343 容量:120mA、定格電圧:1.3V   サイズ:11.6Φ×3.4mm

カレンダー:日付、曜日 瞬間送り機能

電源スイッチ:リューズ2段引き

胴径:28.75mm 厚さ 5.48mm

音叉は動いているが輪列が回転しない。原因は送りツメ調整不良(フェージング不良)でした。

送りツメが振動しているのにインデックス車が回転しない状況でした。送りツメがインデックス車に接してはいましたが押さえていない状態でそれが原因でした。送りツメと止めツメをインデックス車に正しくセットすることをフェージングといいます。重要な調整です。

送りツメをインデクス車に押し当てていくと80~120ミクロンという部位のスキマが徐々に開いて大きくなります。接しているのみで押さえつけがない時のスキマは30±10ミクロンと規定されています。今回はスキマがほとんど開いていませんでした。一旦、ツメをインデックス車から外して、スキマをツメ石の厚さ(60ミクロン)の半分になるようにバネを調整します。その次に、ツメを押し当てて、スキマが100ミクロンぐらいに調整したところ、輪列が快調に回転し始めました。

 

上の図はシチズンハイソニック技術解説書から抜粋です。下の写真は修理品です。各部位の名称はAcctoron218の解説書からの引用です。赤丸部のスキマをツメ石の厚さ(60ミクロン)を目安に調整します。



 

<ご参考>

顕微鏡の下にインデックス歯車と止めツメ、爪楊枝の頭、2.2mmスケールをセットした写真です。