オーバーホール依頼でしたが、ローターの音がぎこちないという症状がありました。原因はベアリングの偏芯円盤にひびが2本入っていました。そのため、割れた部分がベアリングを摺動するときにゴリゴリ感が生じていました。
<時計の説明>
1959年製造開始、諏訪精工舎 セイコーの2代目の自動巻き セイコー独自のマジックレバー巻き上げ方式が搭載された初めての製品。国産初の自動巻腕時計は1955年製造開始の第二精工舎 亀戸工場の「自動巻き1号」です。
(トンボ出版 セイコー自動巻き1 から)
各写真中央部にベアリング機構があります。6個のボールベアリングの軸部分がマジックレバーを駆動するための偏芯ピンになっています。
ベアリング機構部分の拡大図です。軸の円板に偏芯ピンが圧入されていています。写真のようにはっきりした割れと、細い割れの2ヵ所が割れています。
あたかも、偏芯ピンを円板に圧入した時に無理がかかって割れたかのように見えます。長い時間かけてひびが入ってきたのかもしれません。
ベアリング一式が岡山時計部品センターに在庫がありました。右が新しい交換用のベアリングです。この写真ではわかりにくいかもしれませんが、偏芯ピンが圧入ではなく削り出しになっています。
交換した結果、軽やかにグルングルンと慣性の大きな回転感触が味わえるようになりました。
ヒゲ持ち受けが可動ではないためにテンプ受けからテン輪を外して、ヒゲ玉を回して、ひげ持ち位置を0.5mm位調整しました。
<片振り量>
2.2mS→0.2mSに改善されました。
受け石の中央部は潤滑油がうすく固着、受け石周囲部には液状の潤滑油がたっぷり残っていました。注油量が多すぎたためか周囲に流れてしまい、結果、重要な中心部にわずかに残った油は乾いた状態でした。
洗浄して注油した状態です。