シチズンX8(コスモトロンデート)動作せず

                     (修理完了後の写真です。) 

シチズンX8 Cal.4840 仕様

駆動方式 :可動磁石型テンプ調速式

振動数  :21600回/時(6振動)

電池寿命 :1年以上(消費電流は5~13μAが正常)

発売時期 :1970年(昭和45年)5月

 

<修理依頼時のお話>

最近ある方からいただきました。最初から不動です。今回が初めての修理です。別の時計店さんに電池交換、注油等一通りのメンテナンスをしていただきましたが、クォーツ式前の電磁テンプ式のもので、もう電子回路がダメだろうとは指摘されてはいますが、できる限りのことは時計にしてあげたい。・・・ということで修理の依頼がありました。

回路基板は割れはありましたが、生きていました。

両端のネジ穴が割れていました。破片Aは機械の内部にありました。セラミック基板で割れやすいネジ穴です。この基板を別の動作中のX8に組み込んだところ正常に動作しました。破損した状態でもネジ穴の回路パターンがネジで地板(+極)に慎重にネジこめば回路は動作する状況でした。修理依頼品では破損Bのネジが回路基板を止めずに地板にねじこまれていました。そのため、動作しない状態でした。→相談の結果、割れのない回路に交換することとなりました。

見積もり時の確認でもうひとつ重大な問題がありました。テンプが自由振動しない状態でした。テンプ受け側のテン輪に比較的大きな変形がありましたのでどこがでこすれがあり動かない、テンプ不良と考えていました。

テンプを交換してもNG、原因はアンクル竿の曲がりでした。

テンプの振り石がアンクルを振り、アンクルの爪がガンギ歯車に力を与え、輪列が回り、針が時刻を刻みます。写真のようにアンクル竿が曲がっていたのですが、この状態ではアンクル爪とガンギ歯車との噛み合い条件を満足せず、ガンギ歯回転することができませんでした。アンクルを交換しましたので脱進機の再調整を実施しました。

修理完了後の歩度性能

 

 

  十分に普段使いできる良い腕時計になりました。現在は若干進み調整です。

  びぶ朗60秒チャート

  文字板上 

  日差:約+15秒

修理完了:2013-10-22  

無事に修理完了、時計が復活して喜んでいただけました。

 

追記:電池交換の問題点

電池のマイナス極が地板に接触して短絡しやすい構造になっています。今回、時計に入っていた電池も完全に放電していました。以下のような状況で放電したものと考えられます。

ボタン電池の寸法例(Sony製の場合)

SR43SW  A=11.6mm、B=8.2mmです。つまり、マイナス電極の直径は8.2mmです。

一方、時計のマイナス電極の入る部分の直径は黄色矢印で7mmです。7mm部分には3枚のマイナス電極とその下に直径約7mmの絶縁シートがあります。黄色点線部分(直径7mm)は地板ですので、プラス電極です。ここにSR43SWを入れるとマイナス電極直径=8.2mmですから黄色点線の地板つまりプラス電極に接触しショートします。マイナス極の直径が6mmぐらいの電池を選んで、外形が11mmになるようなアダプタを作成しようかと思いましたが、今回は応急処置で0.1mmプラスチックシートで絶縁板をつくりました。外径11.5mm、内径6.5mmのドーナツ状の絶縁板を作成しそこにしっかりはめ込み、黄色点線部で接触しないようにしました。昔のボタン電池と最近のボタン電池では寸法の違いがあるのでしょう。