リューズを引いて時刻合わせした後、動かなくなった。原因は電池押えの破損でした。分解してもうひとつ、テンプの地板側軸受のインカブロックバネが片方の半分が折れていました。インカブロックバネを新品に交換して修理完了しました。
<ESA9154 仕様>
電池:343(オリジナル 水銀電池)代替電池は酸化銀344 (SR1136SW)
サイズ:径11.6mm、高さ3.6mm、 電圧1.55V、容量:100mAh
電池寿命:1年以上 (消費電流)7~8μA)
テンプ振動数:8振動(28800回/時)、
方式:アンクル脱進方式(アンクルを磁気的に引き戻す)
製造開始:1970年ごろ
使用電池LR43(径11.6mm、高さ4.2mmリチウム)でオリジナル電池より0.6mm厚い電池です。電池押えに力がかかり過ぎた状態が継続し破断したものと思います。また、赤丸の破断部には腐食もみられます。
修理としては運よくハミルトンの同一の電池押えが入手でき交換し修理完了としました。電池はオリジナルの343と同一寸法の344(SR1136SW)を使いました。
地板側のテンプ軸受のインカブロックの片方のバネが半分折れていて、サビているます。この状態でもなんとか受石を押さえていて(すこしズレていますが)なんとか軸受の機能は有しており、分解前の時計は動いていました。
インカブロックバネ寸法は縦 約1.8mm、受石径1mmに適合するベルジョンNo40のバネを購入し交換しました。
交換方法は穴石、受石を取り外しバネを片方セットし、バネ側から地板裏側に押し出します。押し出すとバネが簡単にインカブロックから外れます。新しいバネを写真右のようにセットしてこの状態で裏側からタガネで極小のハンマーでコンコンと少しずつ元の位置までセットします。運よく、テンプの縦あがき調整が不要でした。左は交換後の状態です。
写真左:ガンギ車と秒車には白色プラスチックのプーリーがついています。
写真右:輪列受けに2本の摩擦バネがあります。
輪列受けのホゾたて後に摩擦バネを対応するプーリーのすべり溝にセットする機構になっています。ガンギ車と秒車の制動はこのばねによって行われ、ガンギ車は安定して進み、秒車はスムースに回転するしくみになっています。このバネの摩擦力は摩擦バネがプーリーを押さえる力で変化します。強く押さえるとテンプの減衰振動時間が短くなり、振り角がでません。今回は良好な振り角230~250°が得られました。