<整備する時計>
シチズン コスモトロン・スペシャル CAL7803A-79005TA
製造番号:30901719(1973年9月製)
発売時期:1972年(昭和47年)
電池寿命:2年以上 →リューズを引き出しておくと電源が切れ電池が消耗しません
日付・曜日の早修正機能あり
時報合わせ機能あり
<整備前の時計の状況>
①ケース、文字板、バンドの痛みが著しい、ステンレスバンドは折り曲げ部の内面がびっしりサビで廃棄。ガラス、ガラス縁、文字板にも著しい腐食、傷、汚れあり
②時報合わせボタンが固くで動かない
③電池は実装されたままであったが漏液はなし
④電池を外し外部から1.5Vを印加したところ、テンプが振りはじめた。回路、輪列はおおむね無傷と判断
⑤カレンダー早送り機構および、針回しでの日、曜の送りも正常 外装がここまで劣化しているのに、文字板を除いた内部は思いのほか良好な状態で故障はない。オーバーホールで実用性能ががでることを期待して整備します。
旋盤で振れを見ながら、振れがなくなるまで、極小のハンマーで
つまみ部をかるく叩き修正した。
この時計は特別の故障個所が今のところ見当たりません。時計のしくみ、部品構成を忘れないために以下にポイントをご紹介します。なお、シチズンの昭和47年11月の技術解説書の一部を写真の説明を兼ねて掲載させていただきました。
複合回路、テンプと輪列受けを外した状態です。テンプの振り石で駆動されるインデクス車が見えます。
<複合回路>
コイルと磁石のスキマ調整が難しい一体構造
回路とコイルが一体化した複合回路の基板を地板にネジ止めする構造です。平行度、スキマの調整が難しい構造のように思いました。先日修理したX8コスモトロン・デートの場合は複合回路と完成コイルが別々でコイルの高さ調整用のコイル支持台用の座(厚さ0.05mm)が準備されていました。X8に比較してスキマ調整、平行度調整は難しいです。今回はさほど厳密に調整しなくともまずまずの性能が得られました。
<カレンダー日付、曜日の早修正のしくみ>
文字板を地面に対して垂直にして、12時を上でリューズを押すと日付が進みます。6時を上にして押すと曜日が進みます。
時報合わせの機構の写真と技術解説書の説明です。
短時間の観察で、文字板上、下とも、歩度は±15秒、振り角は150~250の範囲で変動をしています。まれには300°以上も観測されます。技術解説書によると正常な振り角は180度~260度となっています。特に振り角が300°を超える原因については、別の整備する時計と比較しながら調査を続けることにします。この辺り、どなたかに教えていただけないでしょうか、よろしくお願いします。修理完了後の1日ランニングでの歩度は+11秒でした。外観はさておき、洗浄もしっかりできていますので清潔で実用できる時計に仕上がりました。 注記:タイムグラファーが大きな片振りですが、この時計は片振りあるのが正常です。以下のシチズン技術解説書の説明を参照ください。
<修理完了> 2013-5-12