セイコー・ロードマチック5606のカレンダー(日、曜)早送り禁止時間帯の説明

(1)5606の技術解説書の注意書きの紹介

曜文字和英切換装置の説明文の注記で午後8時から午前1時までの間は、日・曜送り時間のため日・曜修正装置、曜文字切換え機構は働きません。

 

と書かれています。

 

「午後8時から午前1時までの間に日・曜送り操作をすると故障します」とはっきりとは書かれていません。

(2)なぜ、午後8時~午前1時は操作禁止なのか

黄色丸部の青矢印は24時間で1回転する日回し車についている日車の歯を送るツメのです。(拡大:右上)

赤丸の青矢印は揺動バネの羽根が早送り操作で日車の歯を回そうと押しているところです。(拡大:右下)

 

この写真では、午後8時半ですが、この状態で早送り操作をしますと、日車の歯が日車ツメにぶつかって動きません。その状態で早送り操作のリューズを強引に回しますと揺動レバーが損傷します。摩擦結合の摩擦力が

弱くなったり、プラの羽根部品が割れたりします。

この早送り時に日車が日回し車のツメにぶつかる時間帯は午後8時~午後1時の間は同じように日車の歯がツメにぶつかります。したがって、午後8時~午前1時の間は操作禁止時間帯になります。

 

(3)揺動レバーの説明

リューズを回すと修正カナが回されます。修正カナと修正歯車は摩擦接合しています。修正カナが回ると修正歯車が回り、日車または曜車を回します。

日車、曜車を回すに必要なトルクはこの摩擦力よりは十分に小さいので日・曜の早送りができるわけです。

午後8時半の写真を見ますと、9時の位置で日車の歯が日車のツメにぶつかっています。一方、早送りの揺動レバーの修正歯車の羽根が日車の歯を押そうとしています。つまり、動けない日車を回そうとしています。当然、大きなトルクがかかり、修正カナと修正歯車は空回りします。この空回りは部品を壊さない安全装置なのですが、この禁止操作が原因で摩擦力が低下し、通常時も早送りできなくなる故障となる場合があります。また、プラスチック修正歯車が下の写真のようにプラスチックの輪が割れる故障が起きる場合があります。